田中優子

田中優子の考える東京の魅力

東京は、エリアごとに雰囲気が異なる「多様性」が大きな魅力です。大きく西と東に分けるだけでも違いますし、町単位で細かく分けても、それぞれに違いがあって、細かくいろいろ歩きたくなる都市ですね。

海外からのお客さまや学生たちを連れて歩くときは、私なりの「江戸コース」がいくつかあります。例えば、当時の人たちが遊び歩いていた場所を案内する、浅草寺から芝居町だった猿若町を通って吉原へ向かうルートなどです。もっとも、現在は江戸時代の風景はほとんど失われているので、それぞれの場所を描いた浮世絵をiPadで見てもらいながら、ここはこういう場所だったんだよ、想像してね、と言いながら案内していきます。

江戸から東京になることで失われたものはたくさんありますが、逆に東京になってから魅力的になった場所もあります。例えば、江戸時代の日本橋は年中大混雑していて、普通に歩くのすら困難な場所でしたが、今はずっと落ち着いていますし、明治に入ってから作られた麒麟像も見どころのひとつです。ほかにも、浅草寺の仲見世も近年になってからのもので、何もなかった江戸時代より、東京になってからの方がより繁華街として楽しい場所になっていると言えるでしょう。

UNIQUE

田中優子たなかゆうこ

1952年、神奈川県生まれ。法政大学文学部卒業後、同大大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。第一教養部教授などを経て、2012年4月同大学社会学部長、2014年4月東京六大学で初の女性総長就任。専攻は江戸時代の文学・生活文化、アジア比較文化。『江戸の想像力』(ちくま学芸文庫)で1986年芸術選奨文部大臣新人賞を、『江戸百夢』(ちくま文庫)で2000年芸術選奨文部科学大臣賞、2001年サントリー学芸賞を受賞。

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